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「インスタグラムを科学する」飽くなき探究心からインスタを研究しつくすインスタグラファー @ryuto_sato_

カフェやコーヒーショップを紹介し、「このお店に行ってみたい」と思わせる写真で約12,000人のフォロワーを抱えるインスタグラファー@ryuto_sato_さん。

インスタグラムでどんな写真がウケるか。それを研究すべく彼は写真を投稿後、「どのハッシュタグで人気投稿に選ばれたか」、「どの時間に人気投稿に選ばれたか」をすべてキャプチャに収めているそう。その証拠に彼のカメラロールには数千枚の画面キャプチャが並んでいる。

「インスタグラムを科学する」をモットーに自身のインスタグラムアカウントで実験を重ねる彼の信念に迫る。

朝8時半。よく通っているという近所のカフェに現れたryuto_sato_さんは店主と談笑しながらコーヒーを飲む。もちろん写真を撮ることも忘れない。普段も光が綺麗に入る午前中に訪れることが多いそう。
現在27歳のryuto_sato_さん。いまは写真や映像関連の仕事をメインにしているが、1年前までは会社勤めだったとのこと。

ryuto_sato_さん
元々は写真や映像とは全く関係のない会社で働いていました。ですので、写真の学校に通っていた訳ではなく、インスタグラムがキャリアのスタートになります。
前職では自分の美的感覚やソーシャルメディアにおけるマーケティング能力を存分に活かせる場がなくて、「なんぼのもんじゃ精神」で、自分の力を試してみたくなったのがきっかけです(笑)

なんと威勢の良い始め方!Twitter・YouTubeなど様々な自己発信ツールがある中で、インスタグラムを選んだのは、会社員をしながらコスパよくいろいろな実験ができたからだそう。

ryuto_sato_さん
サラリーマンをやっていた頃は、慌しく働いていたので時間もなく、使えるお金も限られていて、その中で目をつけたのがカフェ・コーヒーの写真でした。

前職で少しばかりマーケティングに関わっていたので、マーケティング視点で物事を考える癖がついていて、「コスパよくいろいろ試せるのってなんだろう?」と考えたときにカフェって気軽に行けるし、土日の撮り溜めもできる。写真スキルもそこまで要求されないと思いまして。旅行やファッションは、お金も時間もかかるし、YouTubeも撮影時間がなく難しいなあと思って。

あとは、モデルやインフルエンサーと呼ばれるような人と会う機会が多かったので、”好きな時に好きなことをして生きていく”いい暮らしぶりをしてるな、、自分もなれるんじゃないかな、と当時の自身とは対照的な生き方に憧れを抱いたというのもありますね。


「時間に縛られない生き方に憧れた。」そんなちょっとミーハーともいえる一面があるからこそ、彼の写真や投稿に憧れ、フォローをする人が多いのかもしれない。
インスタを始めて約2年とのことだが、彼の投稿を遡ると最初と今では雰囲気が全然違う。

ryuto_sato_さん
最初の方の写真は正直あんまり見て欲しくないです(笑)。
初めは、暖かい雰囲気で万人受けするような構図や加工を意識していて、それを突き詰めていくうち「媚びてるな、この写真」と気づき始め、早く自分のスタイルを確立させたいと思うようになりました。

現在のギャラリーは、側から見たら白っぽいという印象を受けるかもしれませんが、目指しているのは”統一感”です。正直、前の写真の方がいいね、コメント共に反応は良かったですよ(笑)。
けど、他の人が真似できない世界観を築いていきたいと思って、今のスタイルになりました。

男性で自分のライフスタイルを積極的に発信している人、かつ写真のスキルが高い人は実はそんなに多くない。風景やポートレートをメインで撮影している方か、モデル業の傍で自分の写真をアップしている方が多いのが現状だ。
彼は終始「他の人が再現できないこと。」を強く意識していた。

ryuto_sato_さん
正直、写真単体の話をすると、僕より写真が上手い人や、僕より多く可愛いモデルさんを呼べる人は沢山います。写真撮影の技術だけに着目するとそんなに自信を持っているわけではなくて。

ただ、「インスタグラムを科学する」じゃないけれども、ソーシャルメディアのマーケティングも考えた上で撮影ができるフォトグラファーというのはそんなに多くなくて、僕にしかできないことじゃないかなと思っています。

「インスタグラムを科学する」。
インタビュー陣も興味津々のワードが彼の口から飛び出した。どういうことですか?と問いかけると、彼の喋りは止まらなくなった。ざっと5分くらいは喋っていただろうか。彼がいかに「マーケティング」に重きを置いてフォトグラファーをしているかが伝わってきた。

ryuto_sato_さん
「インスタグラムを科学する」については、マニアックな内容になるんですけれども、例えばどんな写真が反応がいいのかというのは皆さん感覚値として持っていますよね。けれど、「何故、昨日よりも今日の写真の方がいいねが多く貰えたんだろう」、「どういう構図が当たったんだろう」とか、そこまで突き詰めている人ってそこまで多くないと思っています

例えばハッシュタグだと、どれぐらいエンゲージメントのスピードがあったら各人気投稿に載れるのかに始まり、さらに露出の最大化を図るにはどうすればいいかとか。写っている人が横を向いている方がいいのか、真正面を向いている方がいいのかとか。コーヒーを撮るときは、引きが良いか、寄りが良いか。全部A/Bテストをしてスプレッドシートにまとめています。

スプレッドシート…?!
「シートの話は気持ち悪がられるので、周りにはあまり言ってないんですけどね(笑)」と笑う彼はさらに自分のアカウントを使った「研究過程」をいろいろと教えてくれる。

ryuto_sato_さん
ハッシュタグって30個まで付けられるじゃないですか?
その付けたハッシュタグを1つずつ1時間後、2時間後、3時間後ごとにチェックして、人気投稿に載ったか載っていないかというのを全部キャプチャに撮って確認していました。友達と飲んでいる間も、投稿して1時間後にキャプチャ、一旦飲み会に戻って2時間後にまたキャプチャ、3時間後、帰りのタクシーでキャプチャこれを投稿毎に繰り返して時間があるときにまとめるんです。○×を付けて。

そうやって傾向を見ていくと、「1時間で、これくらいいいねを集められたら、このハッシュタグでは、自分の写真が人気投稿に選ばれやすい」というのがわかってくるんですよね。反対に選ばれなかったときは、また違うハッシュタグを使ってみたり、違う撮影の仕方をしてみたり、投稿を最適化していっています。この研究があるおかげで、「ウケる写真の理解」と、「自身のエンゲージメントに合ったハッシュタグの選択方法」が身につきました。

この突き詰め力は誰かが容易に真似できるものではないし、ここまでスラスラと話せるのは、ネットや本の知識ではなく、彼が自分の手と足を使って研究をしてきた成果なのだと尊敬する。
「なんでそこまで突き詰められるんですか?」という問いには

ryuto_sato_さん
単純に興味関心ですね。
あとは知らないことがあるのが悔しいので、自分が納得するまでとことんやるというのが大きいです。

と言い切った。そんな風にインスタを研究し尽くした彼に「ウケる写真を撮るにはどうすればいいか」と聞いてみた。

ryuto_sato_さん
1つ言うとすれば、自分と近いジャンルの他の人の投稿を見て「勝ちパターン」を見つけるというのが大事だなと思っています。

それを見つけたら、自分のアカウントで試して自分のものにしていく。その繰り返しが自分の写真の幅になっていくので、1回勝ちパターンを見つけてもそれで満足せず、また別の勝ちパターンを探しにいくようにしています。もちろん、勝ちパターンは写真のジャンルやアカウントの目的によって違うと思いますが。

PDCAを回すのが大事ということか、とここでもマーケティング視点に基づいた撮影ノウハウを感じる。やはり、実行と改善の繰り返しが必要なんですねと言うと、こんな裏話もしてくれた。

ryuto_sato_さん
そうですね、たまに心折れそうになる時もありますよ。
よくあるのが自信満々に投稿して、これはマジで伸びるぞ!と思っても全然伸びなかったりとか。逆に、投稿するものがないから、とりあえずこれをアップしてみるかというときに、めちゃくちゃ伸びたりとか。そういうときは、「あれなんか自分の感性違うのかな?」って。
いつもガチでがっかりしています。本当にがっかりしていますが、無駄にしないように反省と対策をして次の投稿に活かすように心掛けてます。

そんな彼の中で最近は「ウケた」と感じるポイントが変わってきている。インスタを始めた当初は、いいね数やフォロワー数を追い求めてきた。フォロワーが10,000人を超えたあたりから、彼は別の指標を伸ばしたいと強く意識するようになった。

ryuto_sato_さん
写真の撮影場所は、「いかに保存されるか」を一番意識して決めています。最初は、何気なく行ったお店を撮影することが多かったのですが、今は行くお店をめちゃめちゃ意識して決めています。

おしゃれだけどあんまり知名度が高くないようなお店、みんなが足を運んだことがないようなお店を発掘してアップするのが最近好きですね。次の週末行ってみよう!今度東京行ったとき覗いてみよう!とストレートに保存数が稼げるので。
お店の発掘にはインスタよりもTwitterや専門メディアを見ることが多いです。新店舗オープンの情報を得るとカレンダーに登録したりしていますね。

「保存」を重視するようになった、その理由とは。

ryuto_sato_さん
僕はインスタグラムを始めて540日でフォロワーが10,000人になったのですが、ある程度の発信力が身についたあとは、本当の意味での影響力を突き詰めたいなと思って。自分の発信で誰かが行動してくれるというのがありがたいし、影響力の指標になると思って、「保存」されることを意識しています。

もしかしたら僕の投稿を見て行ったわけではないかもしれないですが、僕が投稿して保存が200や300を超えるようなお店だと次の週末に実際に行ってくれる方がいて。「@ryuto_sato_さんの投稿を見て行きました」とメンションをくれたりすると、多少なりとも人を動かすことができているんだなと実感して嬉しくなります。

今後自分でギフトブランドをリリースする予定なので、欲しい!とか彼氏にあげたい!とか強烈に思ってもらえるような発信を引き続き心がけていきたいですね。

約3時間、彼に密着して撮影の様子を見たり、話を聞かせてもらったが、フォトグラファーでありながら、インスタグラムに誰よりも詳しい研究者のような一面が強く伺えた。

確かに今の時代は、高額な機材を持って、高度な技術を身につければいい写真が撮れてしまう。見る人の感性やプラットフォームが変わってきている中で、まさにインスタグラムを起点にしたフォトグラファーである「インスタグラファー」の撮影の極意を見せてもらった。

インスタグラムでウケる写真が欲しい方、彼の知見を持ってアカウントを運用していきたい方は、ぜひこちらから問い合わせていただきたい。

■人生が変わった1枚

フォロワー10,000人に対し、リーチが20,000を超え、彼が狙っている「保存」が爆発的に伸びたとのこと。この投稿で得た知見が「勝ちパターン」として今に活きていると話してくれた。

■撮影機材

カメラ
Sony a7rⅲ
Canon 5D ⅳ
iPhoneX

レンズ
SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art
SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art

■得意なジャンル

・カフェ
・メンズファッション
・トラベル
・男性モデルが必要な撮影

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